さあこれからだ:/42 がんばらない健康法=鎌田實
毎日新聞 2012年11月03日 東京朝刊
父は、年齢の割に健啖家(けんたんか)だった。肉が大好きで、特に脂身(あぶらみ)には目がなかった。おむつをあてていたが、構わず焼き肉屋や焼き鳥屋に行って、もりもり食べた。
その代わりにぼくは、父に野菜を多く食べるようにさせて、締めのおじややご飯を食べるのをやめさせた。お酒は糖質(とうしつ)の低い焼酎を勧めた。
糖尿病患者への食事指導としては型破りだが、糖質をできるだけ少なくしたことで、血糖値(けっとうち)はそれほど高くならなかった。それ以上に良かったのは、父のクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)が上がったことだった。「楽しくなければ人生じゃない」と、父もぼくも信じていた。父は88歳で亡くなったが、ぼくは亡くなる直前にも父にビールを飲ませた。
糖質制限食について、日本糖尿病学会はなかなかその有用性を認めてこなかったが、最近になって、糖尿病の食事療法(りょうほう)の選択肢の一つとして認めた。1日の糖質量の目安は130グラム。ご飯なら2杯半(1杯で55グラム)、6枚切りの食パンなら3枚(1枚で40グラム)にあたる。決して厳しい制限ではない。
糖質も人間にとって必要な栄養素(えいようそ)なので、全くゼロにするのは良くない。だが、糖がいつも血管を流れていると、糖をコントロールするために、膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌され、膵臓が疲れてしまう。たんぱく質と糖質、脂肪のバランスを取ることが大事なのだ。
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